2009年4月15日水曜日

家具職人、plots

キッチンは、(有)plots さんに頼んである。今日はそのplotsさんの事務所兼工場へとお邪魔してキッチンの打ち合わせを行った。この会社、妻が探してきたのだが、家具屋?カヌー屋?オーダーメードキッチンメーカー?、そのどれもをこなす多才な会社である。社長の中村孝太郎氏、奥さまで職人の香奈子氏、ほか数名のスタッフによって営まれている小さな会社である。

しかしながら秦野のオフィスを引き払い、川崎に移ってきて1年ほど、とのこと。仕事はどんどんと入ってくるようで大入り満員の様子。数度、このお二人とは打ち合わせで話をしたが、非常に気持ちのよいご夫婦で、造作へのこだわりが随所に見受けられ話をしていて楽しい。

そのセンスの良さと、こだわりから様々なところから仕事が舞い込んでいるようだが、孝太郎氏はカヌー製作も手掛ける、職人でもある。キッチンの打ち合わせのあとでは工場見学をさせてもらった。工場といってもショールームの後ろでガラス張りのなかであり、仕事っぷりはショールームからでも見届けられる。
個人的にはここでもやはり、気になるのは道具である。「切る」、「削る」しかしてない、というのは孝太郎氏の談。様々な「切る」機械が並び、「削る」機械が並ぶ。私個人は研究の都合上、ボール盤と旋盤は使えるのだが、なかなか今日見た機械たちはよくできていると感心した。仕事の効率化には欠かせないようだ。

これは「切る」道具



これは「削る」道具たち

そして、これは「押す」道具。シナフラッシュ(シナ合板)を作る際などに、上から一定の力を加えて保持する、ということ。


「シナフラッシュ」は住宅建設で頻繁に出てくる言葉だが、初めて実際にどんなものかを把握した。「シナノキ」はシナノキ属シナノキ、Japanese Limeと呼ばれるやわらかい広葉樹。桂剥きにしたシナノキやラワンの繊維を一枚ずつ直交させて接着剤で張り合わせていく合板の一種とのこと。芯となるような間に挟み込む板状のものを、2枚の大きな面上のこれまた薄い板ではさみこみ中空にしたものが、どうやら「シナフラッシュ」らしい。なので、中は中空である。合板を形成する桂剥きの「皮」の方向からすれば面と中の部材は直交する。
合板、この技術はある意味素晴らしい。1907年に名古屋の浅野吉次郎が独自に開発したベニヤレースが始まりらしいが、海外ではすでに明治時代には作られていたらしい。今では合板で棟木だってできるし、なんだって合板でできてしまう。「反らない」、「歪みなく均一」というのでてっとり早く家を建てるにはもってこいである。普及するのも理解できる。

訪問した際に、職人さんが一生懸命、削っていたのは椅子の背もたれであった。打ち合わせで腰かけた椅子もなかなかの座り心地であり、曲線美の肘掛をついなでてしまう、というのはうちの同僚、脇田さんがいつも口癖のように言っている、「そうさせてしまうデザイン」というものだろう。電車の座席に色分けがしているとついその上に腰かけてしまい、7人掛けが成立する、というたぐいである。ついつい寝ころんでしまうような長椅子とか、そんなデザインは人間の身体性をくすぐるものらしい。以前、信玄の隠し湯、下部温泉の大市館でジョージナカシマの椅子に座ったことがあるが、これは最高でついつい椅子の肘かけをなでてしまうし、そこに珈琲をおいて本を読みたくなる不思議な椅子であった。我が家のバルコニーにもこうした椅子がほしい

P.S.
これを書いてて気がついたが、下部温泉大市館がつぶれてしまい、裕貴屋という別の旅館になってしまっている。ショック。。。

0 件のコメント: