2009年4月12日日曜日

友引の上棟式

上棟式を終えてひと段落した。

家を建てるという工程のなかでも大きな節目のこの上棟式を終えて、いろいろと考えることがあった。30年ほど昔、自分が九州で子供時代を過ごしていた頃は、上棟式(棟上げとしか呼んだことがない)は日常よく見る光景であった。朝から五色の旗が掲げられ集団登校する小学生の間ではお互いに今日はどこどこで餅まきがある、という情報が交換され子供たちの学校が終わる午後3時くらいに、餅まきが行われる、という暗黙の了解があったように思う。四隅餅をいかにして奪い取るのか、ということに腐心していたことを思い出す。

その土地に住みながらにして家を建て替える場合には無論ご近所さんとは顔なじみだが、新参者がよその土地にやってくる場合、自分たちの素性や取り巻く親戚、友人、知人たちが一体どんな人であるのか、をご近所さんが知るよい機会になっているはずであり、餅まきというイベントを通してその後始まる生活をスムーズに運ばせるような気がする。同時に建築中、騒音をはじめとして周りの住人に迷惑をかけているわけで、そうした不満などを解消する役割にも少なからず貢献していると思う。

職場の人口論・家族論などの専門の先生に聞いたが、2006年あたりから日本は独り暮らしの世帯が最も多くなったと聞いた。住んでいる「独り」が、若者か老人かは別にしてこうした日本の伝統的な光景が見られなくなったのは必然である。またマンションやアパートといった集合住宅に住む場合には、そもそもそんなことには縁遠くどうやってマンションが建っていくのか、といったことに住む人が興味を持とうともその現場を見ることは許されていない。屋根の上の上棟式の儀式に感じたような充実感はおそらく味わうことができないだろうと思われた。

上棟式は、4月7日(火)というグローバルに通じるカレンダーの上での日取りで行われたが、これは六曜で、「友引」にあたる。結婚式は大安で、というくらいは日本人が誰しも知っているが、先勝→友引→先負→仏滅→大安→赤口の順番で日が順繰りにめぐる、この暦は日本人の生活に昔から深くかかわってきた。友引はWikipediaによれば、「凶事に友を引く」と言われているようである。実際、六曜は仏教と関係ないので葬式を忌み嫌うのは迷信であるが、お祝いごとの場合、友を引くからよし、といわれるのもどうやら迷信っぽい。ということで迷信のようにも思えるが、縁起ものは大安には及ばずとも「まあよし」と考えられているらしく、この日が選ばれた。ちなみに我が家の土地を購入した不動産屋さんはこの六曜に従って仕事を進めるらしく契約は必ず「大安」に行う、とのこと。六曜和暦以外にも、二十四節気など日本人の生活にかかわる節目がいくつもあるが、今の時代こうしたことに気を留めることも少ない。

上棟式に意味はあるか?と言われれば「絶対にある」と施主としては自信をもって断言する。忘れかけている日本の伝統的な行事を伝える、という意味以外にも地域に住む、というこれからの意味と集まってくれる人と旧交を温めたり、意外な接点を持ち合わせるまったく無関係と思われている人たちの輪が広がる、という意味でこうした行事は是非ともお勧めしたい。役に立つとか、お金がかかる、とかいう価値判断基準ではない良さを再認識した今回の上棟式であった。

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